2003年10月06日

EU法講義第15回

I. 最近の動き

自動車流通規則1400/2002年の経過期間修了

独禁法の一括例外を認める規則、1995年の指令を改正、条約第81条第3項を具体化。
2002年10月1日から施行されているが、2002年9月30日現在既存の契約については、2003年10月1日までの経過期間。最大の変更点:①販売業者を単独メーカの販売に拘束できない。販売業者が複数メーカの商品を扱う自由が保障された。
また、修理業者もメーカ以外の業者から部品を購入する自由が保障される。
2005年9月30日までの第2次経過期間が終了した後に、販売業者が他加盟国で支店を開店する自由も保障されるようになる。
規則の文言およびその他背景情報は、委員会の競争政策総局の自動車流通ページで: europa.eu.int/comm/competition/car_sector/

加盟国最高裁判決に対する損害賠償請求

EC裁判所2003年9月30日C-224/01、Köbler
原告はオーストリアで大学教授として86年3月に就職。オーストリア法では、15年間勤続手当が予定されているが、原告は、他加盟国での勤続期間の参入を要求する訴えを96年にオーストリアの行政裁判所に提起した。行政事件における最高審である行政裁判院(Verwaltungsgerichtshof)の98年判決は、EC裁判所の判断を受けることなく、原告の訴えを棄却した。
原告は、2000年に民事裁判所でこの判決が違法に原告の権利を侵害するものと主張し、国家賠償責任法に基づく損害賠償請求の訴えを提起した。
Brasserie du Pecheur判例(第6回参照)と似ている問題。
EC裁判所は、FrancovichおよびBrasserie判例を引用し、国内最高裁判所の判断については、立法者の判断と同様、明らかにEU法違反である場合、損害賠償請求が可能、と判断した。理由:①234条第3項の実効性。②既判力からは問題ない:違法判決それ自体が無効となる訳ではない。③どの裁判所が当該損害賠償事件を扱うかが不明との問題点:理由にならない。加盟国は差別なく当該請求を可能としなければならない。④確定判決による欧州人権条約違反がある場合でも、被害者に対する保障が要求される。
但し、本件では明白な違反がない(今まで、当該問題がEC裁判所で判断されたことがないため、国内裁判所の意見にもある程度の理由がある、と述べている)。

II.EC条約第234条:効力問題と解釈問題

「EC裁判所は、次の事項について中間判決を行う。
(a)この条約の解釈
(b)共同体の機関および欧州中央銀行の行為の効力および解釈
(c)閣僚理事会が設置した機関の規約にこの旨の定めがある場合に、当該規約の解釈。
このような問題が加盟国の裁判所に提起され、当該裁判所が判決のためにこの問題についての決定を必要と思う場合には、この問題についてEC裁判所に決定を求めることができる。
このような問題が加盟国の裁判所に審議され、当該裁判所の決定が上告・控訴で争うことができない場合、当該事件をEC裁判所に付託しなければならない。」
「機関の行為」:指令・規則・決定。
解釈:EC条約・二次法。
「国内法が無効となるように、EC法を解釈すべきか」:Simmenthal、NJW 1978, 1771。
国内法が無効となるように解釈した場合、国内立法・憲法裁判所判決が不要。
国内裁判官がそのまま当該国内法を適用しない。
第177条(当時、いま第234条)の実効性が理由。
効力問題:EC裁判所だけが無効とする権限。
第一審でも付託義務。
加盟国国内憲法に違反する二次法の場合:
EC裁判所、Costa、NJW 1964, 2371:EC法が全面的優先。
Solange (の間に)I,BVerfGE 37,271。
Solange (の間に)II,BVerfGE 73,339。
Maastricht,NJW 1993, 3047。
原則としてコントロールは可能が、①EC裁判所との「協力関係」 、②不可欠な基本権水準に限る、との制限がある。
理由:①EC法の実効性、②EC法の妥当根拠、③EC裁判所が最高裁判所でない、である。しかし、今までの実務ではドイツ裁判所による二次法が憲法違反として無効とされた例がない。

EC条約第234条:無効の遡及(そきゅう)性

EC裁判所94年4月26日(Roquette Freres),EuZW1994,570。
原告はドイツに公課を支払い。
原因の規則が無効と裁判所が判断。
但し、遡及性がないと限定、法的安定性。
例外:規則の無効を言い渡した訴訟の原告、第177条(当時)の実効性。

III.EC条約第81(旧85)条:通常事例

「(1)加盟国の貿易に影響を及ぼすおそれがあり、かつ、共同市場の競争の妨害、制限または歪曲を目的とするか又は結果として起こす企業間のすべての協定、企業団体が行うすべての決定及びすべての共同行為、特に次のものを含むこれらの協定、決定及び共同行為は、共同市場と両立せず、かつ、禁止される。
(a) 購入価額、販売価額その他の取り引き条件の直接又は間接の設定
(b) 生産、販路、技術開発又は投資の制限又は統制
(c) 市場又は供給源の配分
(d) 取り引きの相手方に対し、同等の給付に関して異なる条件を適用し、その結果、競争相手方に不利益となるもの
(e) その給付の性質上又は商慣習から契約の対象と関連をもたない追加の給付を行うことを相手方が受諾することを契約締結の条件とするもの。
(2) この条の規定に基づき禁止される協定又は決定は、無効とする。
(3) もっとも、第1項の規定は、次のいずれかの場合には、それを適用しない旨を宣言することができる。
企業間の協定又は協定のグループ 、企業団体が行う決定又は決定のグループ 、共同行為又は共同行為のグループ 、であって、品物の生産若しくは配分の改善又は技術的若しくは経済的進歩の促進に寄与するとともに、その結果生ずる利益に利用者が公正に均てんすることを確保するもの。
但し次のものを除く
(a) 前記の目的を達成するために不可欠でない制限を関係企業に課するもの
(b) これらの企業に対し、当該品物の主要な部分について競 争を排除する可能性を与えるもの。」
通常事例1:価額協定 、談合。
「加盟国の貿易に影響を及ぼす」:二つ以上の加盟国が関連、微細でない。
微細事件(de minimis):2001年12月22日の方針(官報 C 368/13):微細案件についての方針。SME(小中企業)の取引はほとんど対象外(従業員数250名以下、売り上げ4000万Euro以下)。競争相手間の取引はシェア10パーセント以下、その他はシェア15パーセント以下が対象外。但し、競争相手との①値段に関する談合②製造・販売の限定③市場の分配を行う特に重い独禁法違反は別。また、競争相手でない業者と①再販売値段を固定する②再販売地域を限定するなど、特に重大な独禁法違反は別。
通常事例2:並行輸入妨害。
法的効果:無効(第2項)、過料、売り上げの10パーセントまで(前期の講義を参照)。
第三項:例外、個別適用免除、一括適用免除。
例えば規則1400/2002(自動車流通)、規則240/96(技術移転契約、国際商事法務24・4)。

Posted by Karl-Friedrich Lenz at 2003年10月06日 14:43 | TrackBack
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