I. 最近の動き
接続業者の責任
連邦通常裁判所第6法廷、9月23日判決
原告に対する侮辱・殺害教唆など、違法な情報について、当該ページのために場所を提供した接続業者に対し、民法823条に基づいて損害賠償を請求。
接続業者の責任については、1997年の立法(2001年12月改正後通信サービス法(Teledienstgesetz)第11条:他人の情報を保存している場合、責任は、接続業者が当該情報に関する知識を必要とする。被害者は接続業者に苦情を伝える際、どのページにどの違法情報があるかを簡単に確認できる形で説明しなければならない。本件では、この説明を立証できなかったため、訴えを棄却した。
II. 民法第242条、権利の濫用、BGHZ 137, 205 (1997年)
「債務者は、給付を信義誠実と一般慣習に従って履行する義務を負う。」
原告が被告と中古車の売買について交渉した。被告が一定の値段で購入するように申込んだ。原告には、申込みに対して承諾の意思表示をするために、10日間の期限が認められた。
原告は、期限内に書留で承諾の意思表示を被告に送ったが、被告が不在のため、郵便配達人が不在票だけを残した。この不在票を提出して郵便局で書留を受けるべきところ、被告は放置した。そのため、書留が原告に戻った。当然、その時点では10日間の期限が過ぎていた。原告がその時点から2ヶ月後、被告に中古車を決められた値段で引き受けるように要求し、その後、本件訴訟で対価の支払いを請求した。
通常は、意思表示が期限内に到達していないため、売買契約が成立していない。しかし、不在票を放置したことが被告の責任であるため、そのことを民法242条に基づいて主張できない(権利濫用の抗弁)、と原告が主張した。
本件では、権利濫用にはならない。被告は積極的に到達を妨害したことがない。また、不在票には原告の名前が記入されていなかったため、書留の内容を推測することはできなかった。また、本件では、原告も郵便局から書留が戻った時点から2ヶ月ほど放置したため、一方的に被告の責任であるとは言えない。訴えを棄却。
III. 民法第249条: BGHZ 118,312(92年)、刑罰的損害賠償(punitive damages)
「損害賠償義務を負う者は、賠償義務が生じた事情が発生しなかった場合の状態を作らなければならない。人のけが・物の損傷のため損害賠償しなければならない時は、債権者は原状回復にかわって、原状回復のために必要な金額を請求できる。」
原告が被告に対しアメリカで確定判決を獲得した後に、ドイツで強制執行名義として認容を申請。アメリカの判決の内容は:不法行為(未成年者の性的乱用)を原因に、損害賠償と別状、40万ドルの刑罰的損害賠償を認めた。
そもそも民事判決か、刑事判決か:個人に対する支払い請求の場合に民事。
民事訴訟法:公の秩序に反する判決を認容しない。
ドイツ不法行為法:賠償だけ、威嚇などは刑法。
個人の刑罰的損害賠償は認めない。理由:他の債権者との平等、高額 。
検討:賛成。但し、マスコミによる一般人格権侵害の場合に高額な慰謝料を認める最近の判例の傾向は、本判決と矛盾している。被害者の高額金銭請求を認めるため、むしろ不当利得が請求原因となりうる。
なお、1999年5月21日の立法(BGBl 1999 I, 1026)により、本判決の考えがドイツ国際私法の条文で認められるようになった。ドイツでは、被害者の適切な賠償を大幅に超える場合、または、被害者の適切な賠償と異なる目的のためであることが明らかである場合、外国の損害賠償判決を認めることができない、と定めた。
IV.民法第249条:中絶義務
問題の所在
生命を侵害する義務:犯罪防止のため、戦争など。
妊娠中絶の民法問題:妊婦と医者の契約。通常の場合:報酬支払のみが問題、妊婦が中絶を行うように訴えを起こすことが利益関係から考えてない。
刑法で禁止された場合、民法134条によって契約も無効。刑法では現在「相談制度」。憲法第2条が要求する生命保護が以前の制度より効果的か否か、これからの検討が必要。
「相談制度」導入が一部違憲とした連邦憲法裁判所の93年判決(ジュリスト1034参照)は契約が有効とした。
疑問:「中絶義務」と憲法第2条における「保護義務」。
中絶失敗、BGHZ 95, 199(1985年)
扶養費用を損害賠償として医者に請求。
連邦通常裁判所:損害は子供の存在ではなく、存在によって生じる扶養義務。請求認容。
第三者が子供の生命権を主張できない。「中絶義務」を認めることは「保護義務」から疑問。
羊水検査、BGHZ 89, 95 (1983年)
39歳の「高齢出産」でも羊水検査ないため、子供の障害が判明しない。そのため、中絶できない、扶養義務による損害を医者に請求。
検討:原状回復の原則、当該子供の利益、私法の課題と社会法の課題、子供の生命権を国家が直接侵害、医者が主張できない、中絶促進義務が生命保護に悪影響、個別事例における経済的援助より一般的生命保護
連邦憲法裁判所第1法廷1997年11月15日判決、NJW 1998,519
被告が泌尿器科専門医、Xに断種手術を実施したが、失敗のためXの配偶者が妊娠、子供が生まれた。
配偶者の訴えに基づいて子供の生活費と慰謝料を認める判決、医者の憲法異議。
憲法異議を6対2で棄却。第2法廷の1993年の判決(BVerfG NJW 1993, 1751 = ジュリスト1034,68)では確かに疑問が、本件は直接妊娠中絶事例ではないため、大法廷を開く必要がない(5対3)。
生命の保障と訴訟法:医者は生命保護の必要性を主張できない。