2003年11月26日

ドイツ法講義 第22回


I. 最近の動き

無料新聞

連邦通常裁判所第1法廷11月20日判決。
被告は、完全に広告で予算を確保する新聞を無料で配布したところ、原告である有料新聞の出版社が指し止めを請求。請求原因は不正競争防止法第1条(「良俗違反」の競争行為を禁止する一般条項)。
第1法廷は訴えを棄却した。理由:通常、有料で提供される商品・サービスを無料で提供することは、良俗違反となりうる。しかし、新聞発行の自由(憲法第5条)は、無料新聞も保護している。また、新しい競争形態が開発されている場合、従来の形態が必ずしも保護されていない。
検討:「無料」とは言えない。広告収入で予算を確保しているため、単なる広告収入に関する正当な競争。無料テレビと同様、読者の反対給付は、広告に注目することにあるので、無料で情報を提供しているとは言えない。テレビの場合、インターネットの場合には当然可能である形態が、紙媒体ではできない理由はどこにもない。判決の結論に賛成。

II.刑法第242条: 麻薬代金、BGHSt31,145

AがBに麻薬を販売、Bが代金をAから盗む。
代金について没収が問題、Aが代金の所有者か。
窃盗罪:「他人の」が問題。
BからAへ紙幣の所有権を譲渡する契約、無因主義。
民法第134条。
麻薬取引の禁止を解釈、目的から考えた場合には代金の譲渡も禁止、無効。
従って、この場合「他人の」ではない。

III. 刑法第242条:スロット機から賞金を不正獲得

Aがスロット機を操作するプログラムを入手、不正操作により100マルク獲得(BGHSt40, 331)。
コンピュータ詐欺(刑法第263a条)。
窃盗:「奪取」が問題。通常事例:磁石など使用 。
経営者の同意がないため、奪取+。

IV. 刑法第242条:万引きと未遂

未遂・既遂の区別。
万引きの場合:小さい物を鞄などに入れる時点で既遂。
但し:店の警備員などがこの行為を見る場合、簡単に取り戻すことが可能場合は問題。
行為者の返還意思・簡単に強制が可能・行為者の身体領域等を考慮、事例毎に判断。

V. 基本法第3条: 相続税と平等

「(1)すべての人は、法律の前に平等である。
(2)男子と女子は同権である。国家は、女子と男子の同権を実際上達成することを促進し、現在の不利益を排除するように努力する。
(3)何人も、その性別・家系・人種・言語・故郷・信仰・その宗教または政治についての意見によって、不利益を受け、または優遇されてはならない。何人も、その障害によって不利益を受けてはならない。」
連邦憲法裁判所95年6月22日, NJW 1995, 2624:現在の相続税は違憲。
事実関係:Aは遺贈の受遺者、被相続人死亡の時点で93.8万マルクの証券。
相続人が遺贈を実施する一年後:相場が49.9万マルクまで半減。
相続税:44万マルク。訴え:租税裁判所・連邦租税裁判所が棄却、憲法異議。
土地と比較した場合、第3条違反。統一価額:64年現在、72年一度40パーセント増。
納税者が受けている財産の形によって、課税額の格差が生じるが、その格差を正当化する理由はない。
しかし、いきなり相続税制度全体を無効とすることもできない。立法者に対策を要請する判決となったため、Aの事件では納税者が救済されないままに終わった。

VI. 年金制度と共稼ぎ

年金保険がない場合:自分の子供が老後の経済的基盤、しかし年金保険制度:他人の子供が経済的基盤。
育児コストを他人に押し付けて二重年金を受ける夫婦と比べて、子供の養育費を負担とする人に対する制度上の差別が憲法第3条を侵害するか。
連邦憲法裁判所1992年7月7日、BVerfGE 87, 36:第3条違反。
立法者の改正義務と違憲による無効。
同様の方向に

連邦憲法裁判所第1法廷2001年4月3日判決。

主文:子供を育つことにより社会保障制度に貢献する者が、そうでない者と同額の保険掛け金負担を負うことは、平等原則に反し、違憲である。
介護保険が1994年の法律により導入。掛け金によって予算を確保(法定健康保険と同様)。その際、年齢・健康状態などリスクが掛け金と無関係で、月額6450マルクを超えない収入の割合で計算する(1.7%、使用者・労働者が同等負担)。
憲法異議の原告が1982年から1995年の間に生まれた10人の子供の父親。子供がいない者と同額負担が平等に違反と主張して、憲法異議の訴えを提起。
訴えを認める理由:介護保険は(年金保険と同様に)60歳以上の者が給付を受ける。次世代がいなければ、掛け金を払う者がいないため、制度が破綻する。従って、子供の育成が社会保障制度に貢献しているが、掛け金の金額・給付の金額で配慮されない。また、ドイツでは現在、出産率が1.3まで下がったため、高齢化社会の確実な見こみ。子供がいない者が非常に多くなったため、これらの者の只乗り対策が必要。
2004年12月末まで改正しなければならない(即時無効ではない)。その際、社会保障の他制度についても検討が必要。

Posted by Karl-Friedrich Lenz at 2003年11月26日 09:44 | TrackBack
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