2003年12月10日

ドイツ法講義 第24回

I. 最近の動き

EU委員会がドイツなど9加盟国に対し、条約侵害手続きを開始

2002年指令2002/58(通信関連データ保護)の実施期限が2003年10月修了した。指令の内容:特に迷惑メールに対する厳しいopt-in制度が新たに導入されたが、ドイツの実施立法が来年春になる予定。
指令を実施しない場合、委員会が最初の一歩として、当該加盟国に対し、書面で催促を行い、2ヶ月以内の説明を要請する。充分な説明がない場合、EC裁判所で当該加盟国に対する「条約侵害の訴え」が可能となる。

II.基本法第14条:最低生活費、BVerfGE 87,152(1992年)

所得税の税率、所得税法第32a条。
非課税額:5616マルク, 夫婦の場合11232マルク。
第14条に基づく憲法異議、税金負担の「絞殺効果」を認めない。
最低、生活扶助の金額を残す必要、1992年の場合12000マルク。
所得税法第32a条が違憲、1996年まで改正を要求
なお、連邦憲法裁判所第2法廷1998年11月10日によると、子供一人当たりの非課税額2484マルクが不充分。

III.  基本法第14条:被保険者の権利、BVerfG NJW 1991,756

生保、秘密積立金、1000億マルク。
Aが被保険者、B生命会社が保険契約をC保険会社に譲渡。
Bで貯まっている秘密積立金についてAの権利がなくなる。
連邦憲法裁判所:第14条侵害がない。

IV. 基本法第14条:知的財産権、BVerfGE 31, 229(1971年)およびBVerfGE 36, 281(1974年)

知的財産権:特許、著作権、商標など。
日本は、21世紀の戦略として、「知的財産権立国」を方針としているため、特に注目することが必要。
担当者のBlog(k.lenz.name/LB)も知財中心。
1971年判決:教科書に著作物を著者の同意なく、または報酬なく、収録できる立法を部分的に14条違反のために無効とした。
著作権が14条における「所有権」、立法者は原則として著作物の経済的価値を保護しなければならない。本件については、収録権利は合憲であるが、適切な報酬を支払う義務が必要。
1974年判決:特許権も14条における所有権。立法者は特許権を保護しなければならない。
批判:14条第1項第2文によって、所有権の内容を決める課題は連邦憲法裁判所ではなく、立法者にある。知的財産権は物に関する所有権より他人の自由を制限する効果がある。また、情報化社会における著者・発明者の利益と公益の配分は再考が必要(Möller, ww.jurpc.de/aufsatz/20020225.htm同旨)。

V.公用徴収的侵害、BGH NJW 1990, 898

Aが別荘を所有、別荘を取り壊し、マンションを建てる計画 。別荘が史跡として保護されるため、許可ない 。Aが144万マルクの補償金を要求。
公用徴収の場合:補償金要求が可能。
本件「史跡保護」行政行為:公用徴収を目的としない。
「公用徴収に類似する侵害」の場合、補償金請求
要件:違法な侵害、効果が公用徴収と同様。
合法的な徴収で補償義務がある場合、違法な徴収でなお更。
本件:「史跡」指定の行政行為が違法かについて、先に行政裁判で戦う義務。
行政裁判で異議ない場合、補償請求がない。

VI.基本法第2条:囚人の労働収入

基本法第2条第1項。
「(1)各人は、他人の権利を侵害せず、かつ、憲法的秩序または道徳律に反しない限り、その人格を自由に発展する権利を有する。」

連邦憲法裁判所98年7月1日、EuGRZ 1998, 518。
囚人の労働:刑務所内、開かれた行刑の場合:通常契約、執行機関との契約。
刑務所内の労働について、平均収入の5%(月額旧西領域でドイツ213マルク、旧東ドイツ領域で182マルク)。76年行刑法の導入の際、この額を段階的に40%まで上げる必要性が立法過程で主張されたが、98年現在まで5%のまま。
憲法第2条第1項により、行刑の目的を社会復帰に、効果的な社会復帰制度が必要(第13回で紹介したLebach事件も参照)。
社会復帰の目的を達成するため、刑務所外の労働については通常の契約が原則、それに反する州の実務は98年12月末まで廃止。
さらに、賃金を2000年12月31日まで増額させる立法義務を確認。

Posted by Karl-Friedrich Lenz at 2003年12月10日 14:21 | TrackBack
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