2004年10月28日

欧州人権条約の国内効力

連邦憲法裁判所第二法廷、2004年10月14日判決は、欧州人権裁判所の判決のドイツ国内効力について判断した。

事実関係:ある家族法事件(子供の親権に関する争い)では、欧州人権裁判所が憲法意義の原告の主張を支持する判決を下した。しかし、その事件を担当した高等裁判所は、欧州人権裁判所の判決はドイツ連邦共和国を条約当事者として拘束しているが、裁判所を拘束していない、との考え方を示した上に、異議者が敗訴する判決を下した。連邦通常裁判所は、憲法異議を認め、以下のように説明している。

① 確かに、欧州人権裁判所の判決は、ドイツ国内裁判所を直接拘束するものではない。また、刑事訴訟では1998年以来、欧州人権裁判所の判決が再審理由となっている場合を除き、確定判の既判力を破る理由にはならない。② しかし、ドイツ憲法は「国際法に開かれている」「国際人権基準を尊重する」構成を採っている。③ そのため、欧州人権条約が国内連邦法律と同様のランクであるが、国内裁判所は欧州人権裁判所の判断を最低限でも検討し、その判断に従うことができない場合(例えば、欧州人権裁判所手続きでは当事者にならない相手当事者の人権保護のために不可欠である場合)、その理由を説明しなければならない。④ 本件高等裁判所判決が欧州人権裁判所判決を無視した点は、憲法6条(家族に関する人権)を侵害する。

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2004年10月13日

「紫」商標

連邦通常裁判所第1法廷10月7日判決

事実関係:原告は、チョコレート製品を販売している企業。「紫」を商標として登録したが、競争相手が商品の包装に紫を基礎色として使ったところ、原告が商標侵害を主張して本件訴訟を提起した。

裁判所の判断:本件商標が有名であるため、混合のおそれが生じる。商標侵害を認める。
検討:色には限りがある。様々な色について様々な企業が商標を登録できれば、合法的な包装が不可能となる。

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2004年06月30日

戦争犯罪に関する連邦通常裁判所判決

連邦通常裁判所第5刑事法廷2004年6月17日判決は、1944年の行為について判断した。戦争犯罪について起訴できるために、謀殺(ドイツ刑法第211条)の場合には、消滅時効が一切認められていない規制の結果、60年前でも判決の対象となる。

本件の被告人は、ドイツがイタリアを占領した時代に、ドイツ軍に対する爆弾テロ(ドイツ軍兵士6人死亡)の報復措置として、その10倍に当たるイタリア人囚人(内武装対抗者17名)を殺害する命令に従って、59名の殺害作戦を指揮した。

第1審のHamburg地方裁判所は、2002年7月5日の判決で被告人を謀殺罪で有罪としたが、上告審の本件判決は、第1審判決を破棄した上に、刑事訴訟を打ち切った。

第1審判決では、被告人の故意について十分な事実認定がなかったが、被告人が極めて高齢の事情を配慮した上、事実認定のやり直しで必要な確認ができる可能性が少ないことが理由である。

検討:消滅時効を全く認めないことが適切なのか、当時の判断基準と異なる基準で有罪を認めるべきか、多くの論点を含んでいる。

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2004年06月16日

閉店法と平等

連邦憲法裁判所第2法廷2004年6月9日判決は閉店法に対する憲法異議の訴えを棄却した。

閉店法第3条:日曜日、月曜日から土曜日20時以降、閉店を要求している。憲法異議の原告がベルリンで百貨店を経営している。1999年夏、開店禁止時間帯で開店した。その後の訴訟で当該開店が違法とした判決に対し、本件憲法異議の訴えを提起した。憲法第12条(職業の自由)、第3条(平等)違反が問題となる。

憲法異議を認める裁判官が4名、棄却の判断を支持する裁判官が4名で、憲法異議が成功しない。

第12条(職業の自由)では、相当性の原則で検討する。制限の程度と規制を正当化する理由の間に相当な関係が必要。そのため、規制の正当化理由が検討された。特に、労働者の保護が問題となるが、数多く認められている例外(ガソリンスタンド、駅での売店など)で働く従業員の場合、通信販売業者の従業員の場合では適用されないため、その課題は労働法の課題であり、完全閉店を必要としない、と4名の意見であった。しかし、反面、依然として規制を正当化できると考えている裁判官が4名いた。

憲法3条でも、例外領域と規制領域の間の相違を正当化できるかが問題となったが、その点についても評価が4対4で分かれた。

検討:ガソリンスタンドなどは日本のコンビニのように、幅広く生活用品を販売することによって、閉店法を迂回している。法律では、閉店時間帯ではガソリン・旅行必需品しか売ることができないことになっているが、取締り体制がない。その状況では、不平等を正当化できない。
現状が平等違反でないなら、原告も、百貨店でガソリンも売ることにより、迂回策を検討する課題が生じる。

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2004年06月02日

勾留者の労働収入

連邦憲法裁判所第2法廷第2部会3月15日決定(5月12日公開)は、勾留者の憲法異議を却下した。

連邦憲法裁判所の1998年判決(判例集第98巻169ページ)は、当時の受刑者労働収入に関する規定を違憲としたため、立法者は2000年末の改正法により、今まで平均収入の5パーセントであった金額をその9パーセントに増額した。

しかし、この増額改正は勾留の段階では適用されない、勾留者については従来の5パーセントが基準である。そのため、本件の憲法異議原告が勾留中に働いた分の収入が、現在受刑者として働いている収入よりは低い。

このことが憲法3条(法の前の平等)を侵害する、と本件憲法異議で主張した。

しかし、受刑者の場合には社会復帰が自由刑の目的であるに対し、勾留の目的は単に刑事訴訟の運用を保障することにある。また、勾留者には労働義務がない。それらの相違点は、立法者の判断を正当化する適切な理由となるため、憲法第3条侵害はない。

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2004年05月26日

連邦大統領選挙

憲法第54条に基づいて、5月23日の連邦会議(Bundesversammlung)により、Horst Köhler氏が新しい連邦大統領に選ばれた。任期は5年間。

連邦会議は、連邦議会の代表と州議会が選ぶ同数の州代表(州議会の議員に限定されていない)から構成されている連邦大統領選出機関である。

連邦大統領の権限: ①国際法上に連邦を代表する ②連邦法律を署名する ③連邦首相の提案に基づいて、連邦大臣を任命するなど。

Köhler氏は政治家出身ではなく、官僚出身である。直前まではIMF長官として勤めた。

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2004年05月19日

被害者保護法成立

連邦参議院は5月14日に被害者の地位を強化する法案を承認したため、連邦大統領署名・官報掲載の形式的な手続きを残すだけ、当該法案が成立した

被害者の地位を強化するために、具体的に以下の政策を採用した。①被害者の証言に負担が大きいと判断する事件では、軽い事件でも地方裁判所で起訴することにより、第2の事実審がないように配慮できる。②証人尋問をビデオ撮影により、法廷から離れた場所から行う可能性と、証言を全面的に録音することにより、証言の繰り返しを避けることが可能となった。③被害者の証人尋問に被害者が信頼する人物の付き添いを認める。④被害者の公訴参加のために、国選弁護士に費用負担なく依頼することを可能とした上に、売春婦搾取罪の被害者にも公訴参加資格を認めた。⑤付帯訴訟(刑事事件で被害者の損害賠償請求についても同時に判断する手続き)は従来の例外から原則になった。

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憲法異議2003年度統計

Beck速報によると、Papier連邦憲法裁判所長官は2003年度憲法異議統計を発表した。前年度の4692から5200件に増加した。成功率が2.5パーセントに過ぎない。

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賭博規制

Beck速報は賭博規制に関するKarlsruhe行政裁判所の5月7日、10日決定を報告している。

事実関係:原告がイギリスのスポーツ賭博業者に客を斡旋する業務を行ったところ、刑法284条違反(許可なく賭博主催)違反のため、市による禁止処分(行政行為)の対象となった。本件では、その行政行為に対する取消しの訴えにおける仮処分が問題となった。

行政裁判所は仮処分を認め、取消し訴訟が修了するまでには、禁止処分を執行できないと判断した。その理由はEC条約第59条によって認められている「サービスの自由」にある。原則として、イギリスで合法的に提供できる賭博サービスを全加盟国で提供できることになるが、本件でその原則の例外を認める正当な理由があるか否かを検討する必要がある。その際、単に加盟国の賭博市場における独占を維持する金銭的利益が正当な理由とはならない。

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2004年05月12日

専門弁護士統計

連邦弁護士会の5月10日発表によると、専門弁護士の数は2003年度も8パーセント増加し、18.424名になった。この数字は全弁護士の15パーセント弱に相当する。
専門弁護士は、家族法(5.648名)・労働法(5.446名)・租税法・刑法・行政法・社会保障法・破産法・保険法の各分野について、毎年研修を受けること、特に経験が豊かであることを説明した上、弁護士会が認定する資格である。専門知識のない凡弁(平凡弁護士)では、弁護士の数からして競争力がないドイツでは、このような専門知識を依頼者に表示できる資格の人気が上昇している。

リンクはBeck速報による。

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2004年05月06日

保証契約と良俗違反

Beck速報はFrankfurt高等裁判所の3月24日判決について報じている。

保証契約が民法第138条(良俗違反)のために無効となる可能性がある。今までの判例では、保証人には保証債務に相当する支払い能力がないとき、場合によって良俗違反が成立する。本件では、妻が夫の事業で借りた10万マルク融資について保証人となったが、返済するに必要な支払い能力がないところか、利息を支払うこともできない。このような場合、家族のための保証契約は良俗違反で無効となる、とFrankfurt高裁が判断した。

今回の判決は、倒産法改正の影響について論じた点が注目に値する。本件良俗違反の重大な理由は、債務者の一生返済できない過剰な負担にあった。新倒産法では、免責が一定の条件で可能であるため、良俗違反を認める必要がなくなった、との説がある。

しかし、高裁はこの考えを採用しない。確かに、以前と比べて、免責の可能性があるだけ楽であるが、その免責手続きも極めて時間が掛、複雑であるため、依然として、良俗違反判断の際には配慮必要がない、と説明している。

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2004年04月28日

オリンピック大会保護法

2004年3月31日の法律は、新たな知的財産権を導入した。オリンピック関連の表示を保護の対象にしている。

第1条は保護の対象を定義している。五輪シンボル、「オリンピック大会」、「オリンピア」、「オリンピック」の全ての言語での表示、またはこれらの言葉と合成されている言葉。

第2条は、これらの表示の使用権について国際オリンピック委員会(IOC)およびドイツ国内オリンピック委員会の独占権を認めている。

第3条は五輪シンボルとその他の表示について権利侵害の範囲を規定している。五輪シンボルは、同意なく商品の表示または広告に使用することができない。「オリンピック大会」などの言葉は、混合の恐れがある場合に使用できない。但し、オリンピック大会を対象とする著作物の表題については、使用が自由である。

第5条は侵害の場合に停止請求権、損害賠償請求権を認め、第6条は当該商品の廃棄処分請求権を認めている。但し、廃棄処分より緩い対応で侵害を排除することができる場合(例えば包装だけの廃棄処分)ならば、その対応策を採ることになる。

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2004年04月21日

石油・電気課税と平等

連邦憲法裁判所第1法廷4月20日の判決(ドイツ語)は1999年の環境保護租税法について憲法異議の訴えを棄却した。

この改正法は石油・電気の消費量に応じて新たに課税した上に、その租税収入により労働者の雇用に伴う社会保障上の費用を減らした。即ち、製造費用を人件費からエネルギー費用へ転換することにより、エネルギーの節約に間接的に貢献することを目的とした。

その際、ドイツ製造業の国際的競争力を配慮して、製造業のエネルギー消費についてより安い税率を設定した。憲法異議の原告は冷凍倉庫を提供するサービス業者であるため、より高い一般税率の負担が生じた。

確かに、製造業と比べて扱いが不利である。しかし、その不利を正当化する適切な理由(ドイツの国際競争力の観点)が認められるため、恣意的な差別ではない、と法廷が判断した。

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2004年04月07日

家族法改正

Beck速報(ドイツ語):連邦参議院は4月2日に、父子関係の取り消しに関する改正法案を承認した。連邦大統領署名・公布という形式的条件を除いて、当該法案が成立したことになる。連邦政府の元の法案(2003年10月15日)はここに(ドイツ語)

この法案は、法的には父親でない者が生物学的・社会的に父親である場合に、当該父親の法的地位を改善している。従来は、母親と結婚していた男性が父の推定を否認する目的で父子関係の取消しの訴えを提起できたが、逆に、生物学的にも社会的にも子の父親である出産の時に結婚相手でない男性には、取消権がない状態であった。

新法では、この場合には生物学上の父にも取消しの訴えを提起する権限を認める。但し、当該結婚がまだ破綻していない、法律上の父と子の間に社会的な父子関係が存続する場合、その限りではない。

更に、生物学上の父およびその他の社会的に子供のために事実上に責任を負った者には、子との交流に関する権利を認めることにした。

この立法は、連邦憲法裁判所第1法廷2003年4月9日判決(ドイツ語)が現行法を違憲とし、2004年4月30日まで改正を要求したために必要となった。現状では、生物学上の父親にも保障されている家族に関する人権(憲法第6条)が侵害されている、と判断した。

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2004年04月02日

弁護士による資金洗浄

連邦憲法裁判所第2法廷の2004年3月30日判決(ドイツ語)は、弁護士の報酬請求が資金洗浄(ドイツ刑法第261条)に該当するか否かについて判断した。

資金洗浄(money laundering)規制は、国際条約およびEU指令を受けて1992年に導入され、数回改正された。最後の改正は2001年で、業務上脱税の場合も対象犯罪となるようにした。

本件では、大型詐欺事件(被害者数ドイツ国内だけ94.000人、被害総額1000億円台)の容疑者の弁護を引き受けた後の被告人が、相場と比べて極めて高い金額の報酬を現金で要請し、明白に詐欺によって入手した現金からの支払いを受けたため、刑法261条違反で有罪判決を受けた。

連邦憲法裁判所で被告人の憲法異議により、刑法261条の合憲解釈が必要とされた。

憲法12条(職業の自由)における相当性判断が中心的な論点となった。他の職業と異なり、弁護士の場合には、無制限な適用が容疑者との信頼関係に必要な黙秘義務が問題となる。また、単なる容疑では、当該財産を犯罪収益として扱うことが無罪の推定も侵害する。

そのため、弁護士の場合、刑法261条第5条を適用せず、犯罪収益である事実について明白な知識を必要とする。但し、本件の被告人には当該知識があったため、結果として、有罪判決が憲法12条を侵害しない。

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2004年03月11日

平等と証券投資所得

連邦憲法裁判所第2法廷2004年3月9日判決(ドイツ語)は憲法3条(法の前の平等)違反のために一定の所得税条文を違憲・無効とした。

当該条文は、証券を投資から6ヶ月以内に売ることによって利益を得た場合、所得として所得税の対象とした。

しかし、その際の課税根拠は単に納税者の申告で、その申告を確認する手続きが充分に整備されていなかったため、規制が遵守されている率が余りにも悪く、払う者は極一部の正直な納税者だけであった。その状況が構造的に規制の設計から生じたため、平等違反のために当該規制を1997年・1998年については無効とした。

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2004年03月07日

住宅盗聴に関する判決

連邦憲法裁判所の第1法廷は、3月3日の判決により、1998年に導入された住宅内盗聴に関する規制の一部を違憲とした。

判決はここにある(ドイツ語)。

組織犯罪など重大な犯罪に対するのために必要不可欠である限り、住宅ないで容疑者の発言を盗聴ことが当該規制により可能である。原則として3名の裁判官が発行する令状が必要である。

導入の際、単に刑事訴訟法が改正されただけではなく、憲法第13条(住宅の不可侵に関する人権保障)も改正された。

そのため、憲法改正の部分、刑事訴訟法の部分について合憲性が問題となった。

憲法改正も憲法第79条第3項が永遠に保障している原則に対する侵害となる場合、無効となる可能性がある。本件では、人間の尊厳(憲法第1条)に対する侵害であるか否かが論点である。

憲法13条改正が79条第3項を侵害するものでない、と法廷が判断した。但し、人間の尊厳(憲法第1条)を配慮して解釈する必要がある。

そのため、住宅内盗聴が絶対に対象とすることができない領域を認める必要がある。その領域が対象となる限り、盗聴が絶対に許されない。許される範囲を超える時点で、盗聴を中断し、既に入手した情報を即時削除し、刑事訴訟で利用することが許されない。当該領域は、特に家族などとのやり取りを含む。

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2003年12月17日

ドイツ法講義 第25回

I. 最近の動き

母性保護と差別

連邦憲法裁判所第1法廷11月18日判決、12月9日公開。
母性保護法:子供が生まれる6週間前および生まれてから8週間の間には、女性を働かせることが禁止されている。その間の給料は継続的に受ける権利がある。
そのために必要な予算は、使用者・健康保険機関・税金で確保する。その際、中小企業の場合、分担制度が実施されている。女性従業員の数、出産の数と関係なく、従業員一人当たりの費用が固定金額となる。その結果、採用に関する判断の際、母性保護に伴う費用を配慮して女性を差別する可能性がなくなる(女性の場合、勤務が中断される非金銭的な問題は残るが)。
本件では、100名前後の従業員がいる企業で、分担制度に参加しないため、個別的に原告の従業員に出産手当を支払う義務が発生したが、その支払いを拒否した。労働裁判所で敗訴した後、連邦憲法裁判所で、この制度が憲法を侵害していることを主張した。
第1法廷は憲法侵害を認めて、立法者に、問題を2005年末まで解決するように命令した。この制度は現在、憲法第3条を侵害している。分担制度の適用範囲外の領域では、使用者の出産に伴う経済的負担が採用判断の際に女性差別の原因になりうるため、許されない。EUの1976年指令などの影響を認め、以前の逆の考え方を採用した判例(BVerfGE 37, 121、1974年)を変更した。当時はまだ、「使用者が当該負担を嫌がるなら、女性を採用しなければ良い」、との説明の上で12条(職業の自由)に対する侵害を否定したが、この考え方は構造的な女性差別を肯定してため、変更が必要。

II.基本法第2条第2項:中絶義務

「(2)各人は、生命・身体を害されない権利を有する。移動の自由は、不可侵である。これらの権利は、法律の根拠にもとづいてのみ、これを侵害することが許される。」
連邦憲法裁判所第1法廷1997年11月15日判決、NJW 1998,519(第16回の復習)。
被告が泌尿器科専門医、Xに断種、失敗のためXの配偶者が妊娠、子供が生まれる。
配偶者の訴えに基づいて子供の生活費と慰謝料を認める判決、医者の憲法異議。
憲法異議を6対2で棄却。第2法廷の1993年の判決(BVerfG NJW 1993, 1751 = ジュリスト1034,68)では確かに疑問が、本件は直接妊娠中絶事例ではないため、大法廷を開く必要がない(5対3)。
生命の保障と訴訟法:医者は生命保護の必要性を主張できない。

III.基本法第2条第2項:核兵器に対するデモ

連邦憲法裁判所BVerfG NJW 1993, 2432。
被告人が米軍基地の柵を切り壊す、「平和基地」を作る。
器物損壊、住居侵入罪などで有罪。
基本法第2条第2項を理由に憲法異議。
核兵器による周りの市民への危険?
安全基準が充分、危険でない。保護義務の場合、立法者の裁量。事故対策が充分。

IV.基本法第12条:司法試験

「(1)すべてのドイツ人は、職業、職場および養成所を自由に選択する権利を有する。職業に従事することは、法律により、または法律の根拠にもとづいて、これを規律することができる。」
連邦憲法裁判所1991年4月17日, NJW 1991, 2005。
Aが第2次司法試験で6.38点(18点満点)しかない、より良い評価を請求する行政訴訟。
Bが第1次司法試験で2回目不合格(再度受験資格なくなる)、再評価を要求。
主観的職業要件、相当性原則。
基本権が法治国家的な手続きを保障。
複数試験官、受験生が評価を知る権利、受験生が再評価を要求する権利、但し:裁判所による再評価はない(他受験者との比較ができないため)、成功の場合:試験官による再評価を命令、通説だけが正解との採点基準はいけない。
日本の現行司法試験の問題点:上記基準から「法治国家的手続き」を保障していないため違憲。更に、国家の予算を配慮して客観的制限の要素もあるため、仮に試験手続きの問題を解決しても、ドイツ基本法第12条の基準では疑問。

V. 基本法第12条:弁護士検索サービス

連邦憲法裁判所1992年2月17日, NJW 1992, 1613。
A(弁護士)が自分の専門を「家族法」と申請、「弁護士検索サービス」に参加。
参加費用が初期50マルク+月30マルク。
弁護士会が違法な広告とみてAに対し懲戒処分。
連邦憲法裁判所:この場合、基本法第12条から考えて広告が違法でない。
理由:確かに「家族法」の専門家、大々的な広告でない、市民が情報を必要、弁護士会も専門家のリストを作成。
禁止される広告:要請なく依頼者に声をかけること、大々的な広告など。
結論:弁護士検索サービスが違法でない。

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2003年12月10日

ドイツ法講義 第24回

I. 最近の動き

EU委員会がドイツなど9加盟国に対し、条約侵害手続きを開始

2002年指令2002/58(通信関連データ保護)の実施期限が2003年10月修了した。指令の内容:特に迷惑メールに対する厳しいopt-in制度が新たに導入されたが、ドイツの実施立法が来年春になる予定。
指令を実施しない場合、委員会が最初の一歩として、当該加盟国に対し、書面で催促を行い、2ヶ月以内の説明を要請する。充分な説明がない場合、EC裁判所で当該加盟国に対する「条約侵害の訴え」が可能となる。

II.基本法第14条:最低生活費、BVerfGE 87,152(1992年)

所得税の税率、所得税法第32a条。
非課税額:5616マルク, 夫婦の場合11232マルク。
第14条に基づく憲法異議、税金負担の「絞殺効果」を認めない。
最低、生活扶助の金額を残す必要、1992年の場合12000マルク。
所得税法第32a条が違憲、1996年まで改正を要求
なお、連邦憲法裁判所第2法廷1998年11月10日によると、子供一人当たりの非課税額2484マルクが不充分。

III.  基本法第14条:被保険者の権利、BVerfG NJW 1991,756

生保、秘密積立金、1000億マルク。
Aが被保険者、B生命会社が保険契約をC保険会社に譲渡。
Bで貯まっている秘密積立金についてAの権利がなくなる。
連邦憲法裁判所:第14条侵害がない。

IV. 基本法第14条:知的財産権、BVerfGE 31, 229(1971年)およびBVerfGE 36, 281(1974年)

知的財産権:特許、著作権、商標など。
日本は、21世紀の戦略として、「知的財産権立国」を方針としているため、特に注目することが必要。
担当者のBlog(k.lenz.name/LB)も知財中心。
1971年判決:教科書に著作物を著者の同意なく、または報酬なく、収録できる立法を部分的に14条違反のために無効とした。
著作権が14条における「所有権」、立法者は原則として著作物の経済的価値を保護しなければならない。本件については、収録権利は合憲であるが、適切な報酬を支払う義務が必要。
1974年判決:特許権も14条における所有権。立法者は特許権を保護しなければならない。
批判:14条第1項第2文によって、所有権の内容を決める課題は連邦憲法裁判所ではなく、立法者にある。知的財産権は物に関する所有権より他人の自由を制限する効果がある。また、情報化社会における著者・発明者の利益と公益の配分は再考が必要(Möller, ww.jurpc.de/aufsatz/20020225.htm同旨)。

V.公用徴収的侵害、BGH NJW 1990, 898

Aが別荘を所有、別荘を取り壊し、マンションを建てる計画 。別荘が史跡として保護されるため、許可ない 。Aが144万マルクの補償金を要求。
公用徴収の場合:補償金要求が可能。
本件「史跡保護」行政行為:公用徴収を目的としない。
「公用徴収に類似する侵害」の場合、補償金請求
要件:違法な侵害、効果が公用徴収と同様。
合法的な徴収で補償義務がある場合、違法な徴収でなお更。
本件:「史跡」指定の行政行為が違法かについて、先に行政裁判で戦う義務。
行政裁判で異議ない場合、補償請求がない。

VI.基本法第2条:囚人の労働収入

基本法第2条第1項。
「(1)各人は、他人の権利を侵害せず、かつ、憲法的秩序または道徳律に反しない限り、その人格を自由に発展する権利を有する。」

連邦憲法裁判所98年7月1日、EuGRZ 1998, 518。
囚人の労働:刑務所内、開かれた行刑の場合:通常契約、執行機関との契約。
刑務所内の労働について、平均収入の5%(月額旧西領域でドイツ213マルク、旧東ドイツ領域で182マルク)。76年行刑法の導入の際、この額を段階的に40%まで上げる必要性が立法過程で主張されたが、98年現在まで5%のまま。
憲法第2条第1項により、行刑の目的を社会復帰に、効果的な社会復帰制度が必要(第13回で紹介したLebach事件も参照)。
社会復帰の目的を達成するため、刑務所外の労働については通常の契約が原則、それに反する州の実務は98年12月末まで廃止。
さらに、賃金を2000年12月31日まで増額させる立法義務を確認。

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2003年12月02日

ドイツ法講義 第23回

I. 最近の動き

百貨店等での法律相談

新聞記事によると、ドイツで初めて百貨店、商店街、郵便局など消費者の出入りが多いところで法律事務所経営が開始された。報酬の金額は法律相談の場合、50ユーロの基本料金で始まり、依頼がある場合、通常の規定による(弁護士手数料法)。相談は原則として郵便局・旅行代理店と同様に、他人に見られる状況となるが、必要に応じて、個室も使う。経営者は積極的に拡大することを考えている。
第2回「最近の動き」で紹介した通り、電話による固定料金法律相談が違法でない、と連邦通常裁判所第1法廷が2002年9月に判断した。市民により近い法曹を目指す場合、法律相談を利用しやすい新しい形態が参考になる。

II.アルコールとカンナビス(インド大麻)

連邦憲法裁判所 94年3月9日、BVerfGE 90, 144。
アルコール、タバコなど:刑事法・禁止がない。
大麻の場合、アルコールと比較して健康侵害の程度が同じから、アルコールを禁止しないながら大麻だけ禁止するのは第3条違反との主張。
健康侵害の程度のみが基準なら、確かに問題。
しかし、その他の基準:酔う目的でない利用法、社会的な認容、アルコール禁止制度の実効性に疑問など。
従って、差別の妥当な理由があるため、憲法違反がない。

III.恣意的判決

連邦憲法裁判所 92年11月3日、BVerfGE87,273と連邦憲法裁判所 92年4月7日、BVerfGE 86,59。
BVerfGE 87,273: 複数の裁判所が同一法規を解釈して結論が異なる場合でも、第3条違反がない。
裁判官の自主性が保障されている(基本法第97条)、他の全ての裁判所が別な解釈を採用する場合でも、裁判官が自分の考えに基づいて判断できる、司法が必然的に統一的でない。
制限:恣意的な判断。
要件:客観的にみて絶対に支持不可能な解釈。
裁判官が当然適用すべき法規を見逃した場合。
裁判官が法規の内容を極端に勘違いした場合。
本件の判断にはある程度の理由が認められるため、恣意的とは言えない。
BVerfGE 86, 59:利用目的変更法の解釈。
住居確保のため、住居を営業目的(事務所・店)などに利用する場合には官庁の許可が必要。
本件では、二つのアパートを改築して一つにする計画について、地方裁判所が当該法律を適用、許可を要求。
しかし、別に営業目的に利用する予定がなく、立法の文言からみて恣意的な解釈。
憲法異議に理由がある、判決破棄・差し戻し。

IV. 基本法第14条:借り主の占有

「(1)所有権および相続権は、保障される。内容と限界は、法律でこれを決める。
(2)所有権は義務を伴う。その行使は、同時に公共の利益に役立つべきである。
(3)公用徴収は、公共の利益のためにのみ許される。公共徴収は、補償の方法および程度を規律する法律により、または、法律の根拠に基づいてのみ、これを行うことが許される。補償は、公益および関係者の利益を正当に斟酌して、これを定めなければならない。補償の額について争いあるときは、通常裁判所に訴える途が開かれる。」
借主保護:93年5月26日、連邦憲法裁判所判決(BVerfGE 89,1)。
賃貸借の場合、使用賃借人(借り主)を保護:解約が制限され、正当な理由がない限り解約が無効(民法第564b条)。正当な理由:自分または家族のために必要、賃借人の支払い遅滞など。
使用賃貸人(家主)側:所有権、民事裁判で解約を認めない解釈の際に配慮。
使用賃借人(借主):占有、占有も基本法第14条における「所有権」か。
民法第823条の所有権概念・憲法の所有権概念。
憲法の場合:幅広くすべての財産権。
借り主の占有:権利、理由を説明する請求権、損害賠償請求権(その他の権利)。
従って第14条における「所有権」。
両方の当事者から憲法異議が可能。
但し、本件では地方裁判所の判断に憲法違反が認められない。

V. 基本法第14条:強制競売、BVerfGE 42,64(1976年)

summum ius, summa iniuria。
AとBが離婚、相場が12万マルクの住居について清算のために競売。
Bの弁護士が費用節約のために競売に出廷しない。
Aが2000マルクで落札、Bの憲法異議(第3条、第14条)。
憲法異議認容。第14条が自由の基礎、特に重要。
区裁判所はBに競売申請の取り下げを薦めるべきであった。

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2003年11月26日

ドイツ法講義 第22回


I. 最近の動き

無料新聞

連邦通常裁判所第1法廷11月20日判決。
被告は、完全に広告で予算を確保する新聞を無料で配布したところ、原告である有料新聞の出版社が指し止めを請求。請求原因は不正競争防止法第1条(「良俗違反」の競争行為を禁止する一般条項)。
第1法廷は訴えを棄却した。理由:通常、有料で提供される商品・サービスを無料で提供することは、良俗違反となりうる。しかし、新聞発行の自由(憲法第5条)は、無料新聞も保護している。また、新しい競争形態が開発されている場合、従来の形態が必ずしも保護されていない。
検討:「無料」とは言えない。広告収入で予算を確保しているため、単なる広告収入に関する正当な競争。無料テレビと同様、読者の反対給付は、広告に注目することにあるので、無料で情報を提供しているとは言えない。テレビの場合、インターネットの場合には当然可能である形態が、紙媒体ではできない理由はどこにもない。判決の結論に賛成。

II.刑法第242条: 麻薬代金、BGHSt31,145

AがBに麻薬を販売、Bが代金をAから盗む。
代金について没収が問題、Aが代金の所有者か。
窃盗罪:「他人の」が問題。
BからAへ紙幣の所有権を譲渡する契約、無因主義。
民法第134条。
麻薬取引の禁止を解釈、目的から考えた場合には代金の譲渡も禁止、無効。
従って、この場合「他人の」ではない。

III. 刑法第242条:スロット機から賞金を不正獲得

Aがスロット機を操作するプログラムを入手、不正操作により100マルク獲得(BGHSt40, 331)。
コンピュータ詐欺(刑法第263a条)。
窃盗:「奪取」が問題。通常事例:磁石など使用 。
経営者の同意がないため、奪取+。

IV. 刑法第242条:万引きと未遂

未遂・既遂の区別。
万引きの場合:小さい物を鞄などに入れる時点で既遂。
但し:店の警備員などがこの行為を見る場合、簡単に取り戻すことが可能場合は問題。
行為者の返還意思・簡単に強制が可能・行為者の身体領域等を考慮、事例毎に判断。

V. 基本法第3条: 相続税と平等

「(1)すべての人は、法律の前に平等である。
(2)男子と女子は同権である。国家は、女子と男子の同権を実際上達成することを促進し、現在の不利益を排除するように努力する。
(3)何人も、その性別・家系・人種・言語・故郷・信仰・その宗教または政治についての意見によって、不利益を受け、または優遇されてはならない。何人も、その障害によって不利益を受けてはならない。」
連邦憲法裁判所95年6月22日, NJW 1995, 2624:現在の相続税は違憲。
事実関係:Aは遺贈の受遺者、被相続人死亡の時点で93.8万マルクの証券。
相続人が遺贈を実施する一年後:相場が49.9万マルクまで半減。
相続税:44万マルク。訴え:租税裁判所・連邦租税裁判所が棄却、憲法異議。
土地と比較した場合、第3条違反。統一価額:64年現在、72年一度40パーセント増。
納税者が受けている財産の形によって、課税額の格差が生じるが、その格差を正当化する理由はない。
しかし、いきなり相続税制度全体を無効とすることもできない。立法者に対策を要請する判決となったため、Aの事件では納税者が救済されないままに終わった。

VI. 年金制度と共稼ぎ

年金保険がない場合:自分の子供が老後の経済的基盤、しかし年金保険制度:他人の子供が経済的基盤。
育児コストを他人に押し付けて二重年金を受ける夫婦と比べて、子供の養育費を負担とする人に対する制度上の差別が憲法第3条を侵害するか。
連邦憲法裁判所1992年7月7日、BVerfGE 87, 36:第3条違反。
立法者の改正義務と違憲による無効。
同様の方向に

連邦憲法裁判所第1法廷2001年4月3日判決。

主文:子供を育つことにより社会保障制度に貢献する者が、そうでない者と同額の保険掛け金負担を負うことは、平等原則に反し、違憲である。
介護保険が1994年の法律により導入。掛け金によって予算を確保(法定健康保険と同様)。その際、年齢・健康状態などリスクが掛け金と無関係で、月額6450マルクを超えない収入の割合で計算する(1.7%、使用者・労働者が同等負担)。
憲法異議の原告が1982年から1995年の間に生まれた10人の子供の父親。子供がいない者と同額負担が平等に違反と主張して、憲法異議の訴えを提起。
訴えを認める理由:介護保険は(年金保険と同様に)60歳以上の者が給付を受ける。次世代がいなければ、掛け金を払う者がいないため、制度が破綻する。従って、子供の育成が社会保障制度に貢献しているが、掛け金の金額・給付の金額で配慮されない。また、ドイツでは現在、出産率が1.3まで下がったため、高齢化社会の確実な見こみ。子供がいない者が非常に多くなったため、これらの者の只乗り対策が必要。
2004年12月末まで改正しなければならない(即時無効ではない)。その際、社会保障の他制度についても検討が必要。

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2003年11月19日

ドイツ法講義 第21回

I. 最近の動き

アメリカへの容疑者引渡し
連邦憲法裁判所第2法廷11月5日決定(11月13日公開)。
容疑者はイエメン国籍を有する者で、アメリカでテロ組織支援のため、逮捕状が発行されている。寄付を行うために、と騙されて連邦共和国に来たところで、ドイツで逮捕された。本件では、アメリカへの引渡しが可能であるか否かが問題。
結論:憲法異議の訴えを棄却。本件容疑の重大性を配慮した場合、仮に容疑者が騙されたとしても、引渡しが国際法違反とは言えない(別に誘拐されたわけではない)。また、確かに、アメリカのテロ関係捜査では拷問・特殊裁判・根拠不明の上にキューバなどの強制収用所での身柄拘束など、非法治国家的な側面が新聞などで報告されているが、本件については、アメリカ側が引き渡しを要請した際、通常の裁判にかけることを約束したこと、在アメリカのドイツ大使館は、この約束の履行について監視することが期待されていることを配慮し、引渡しが容疑者の人権を侵害しない。

タバコ訴訟:第一審判決は訴えを棄却

第3回の復習:
「連邦通常裁判所第4法廷、3月19日判決、記録番号IV ZR 139/01 。
原告がタバコメーカに対し損害賠償を請求する予定。請求原因は不法行為(民法第823条、製造物責任法)。被告は権利保護保険。本件訴訟はタバコメーカに対する訴訟費用を被告が負担しなければならないか否か、との問題に関するもの。
第二審は訴えを認めた。連邦通常裁判所は被告の上告を棄却したため、原告の勝訴が確定した。
被告は、本訴には「成功の見込みがない」と主張した。その点については、被告が遅滞なく書面で指摘する義務を普通契約約款に違反して怠ったため、判断する必要がない。
したがって、タバコメーカの責任に関する判断はまだ将来のもの(担当者の「未来法」発想)。」

今回は、Arnsberg地方裁判所が被告側の責任を否定(21万3千ユーロの損害賠償)。理由:因果関係の立証ができない。また、原告はタバコの使用頻度を削減したため、依存症の効果が認められない。製造物責任に基づく請求は、タバコには「瑕疵」がないため、成立しない。

検討・反論:因果関係を否定する判断は疑問。また、製造物責任については、当該商品の設計上の通常利用により損害が発生する場合、なおさら責任が成立すべきであり、被告側に有利に働くべき事情ではない。

II.刑法第211条:同情殺害、BGHSt37,377

「(1)謀殺者は、無期自由刑に処する。
(2)謀殺者とは殺人嗜好から、性欲の満足のために、物欲から、若しくはその他の下劣な動機から、背信的に、若しくは残酷に、若しくは公共に危険を生ずべき方法を用いて、又は、他の犯罪行為を可能にし、若しくは隠蔽するために、人を殺した者である。」

被告人が看護婦。危篤患者5名を注射で殺害。動機は患者の苦しみに同情。
第一審判決:故殺。検察側の上告:謀殺と主張。
「背信的」:被害者が攻撃を予想しないこと、それによって無防備であることを利用。
更に、被害者に対する「敵対的動機」が必要。
被害者のために行動する場合、「敵対的動機」がない。
危篤患者の場合には、場合によっては「敵対的動機」がないが、 客観的に見て被告人の判断に妥当性があることが必要。
本件殺害行為の被害者の苦しみなどを配慮すると、同情する妥当性を容認。
検察側上告が棄却。
故殺について:「安楽死」による違法性阻却がない。
患者の同意がない、ドイツ法では不作為(治療中止)のみが認められる。

III.立法者無視、BGHSt30, 105

被告人がドイツ滞在トルコ人。被告人の叔父である被害者が被告人の妻を強姦し、被告人に対し侮辱、脅迫を繰り返した。被告人が銃で攻撃を予想しない被害者を殺害。
「背信的」?
被害者の態度を配慮した場合、無期自由刑が重過ぎる。
連邦憲法裁判所判例BVerfGE45, 187(77年)によってこのような事例で手当てが必要。
総則の刑を軽減する事由(責任能力・禁止の錯誤など)を類推適用、3年から15年までの自由刑。
刑法の解釈か、刑法無視か。
問題点:(Tröndle/Fischer 17 zu 211): 故殺より最低刑が軽い、未遂などの場合には二重に軽減すべきか、課題である謀殺構成要件の制限的解釈から逃げている等。
従って、「判例」ではなく、刑法を適用すべき

IV. 刑法第242条:「十字架」

「窃盗
(1)不法に領得する目的で、他人の動産を他人から奪取した者は、5年以下の自由刑又は罰金に処する。
(2)この罪の未遂犯は、これを罰する。」
1995年:Grafingの高等学校で夜間すべての十字架を取り出し、その変わりにコーラン聖句・陰陽シンボル・平和のハト・Zarathustra箴言(しんげん)・Rosa Luxemburg引用(記事による)。
背景:連邦憲法裁判所95年5月16日判決(BVerfGE 93, 1):学校で十字架を飾ることが違憲。
窃盗罪:動産・他人の・奪取・不法に領得する目的。
不法に領得する目的:目的は奪い取りのみ、自分の財産にする目的ない。
使用窃盗と同様。

V. 刑法第242条: 麻薬代金、BGHSt31,145

AがBに麻薬を販売、Bが代金をAから盗む。
代金について没収が問題、Aが代金の所有者か。
窃盗罪:「他人の」が問題。
BからAへ紙幣の所有権を譲渡する契約、無因主義。
民法第134条。
麻薬取引の禁止を解釈、目的から考えた場合には代金の譲渡も禁止、無効。
従って、この場合「他人の」ではない。

VI. 刑法第242条:スロット機から賞金を不正獲得

Aがスロット機を操作するプログラムを入手、不正操作により100マルク獲得(BGHSt40, 331)。
コンピュータ詐欺(刑法第263a条)。
窃盗:「奪取」が問題。通常事例:磁石など使用 。
経営者の同意がないため、奪取+。

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2003年11月12日

ドイツ法講義 第20回

I. 最近の動き

租税法改正に関する連邦参議院議決

11月7日の決議で、
① 脱税大赦法案を否決。この法案は成立する場合、2004年中には、外国で投資した脱税資金について一律25パーセントを支払う場合、脱税の責任がなくなる。2005年1月から5月までは、一律金が35パーセント。その後、この特別措置が修了する。連邦政府が200億ユーロ前後の脱税資産の帰国を期待し、それにより50億ユーロの税収増と推定している。
② タバコ税の増税、一箱分1ユーロ。
の法案を否決した。州の税収に響くため、連邦参議院の同意が必要。

勾留におくる手紙の検閲と翻訳費用

連邦憲法裁判所第2法廷第3部会10月7日決定(11月7日公開)。憲法第3条に基づく憲法異議を認容。
異議者は、武器法違反で起訴され、勾留となった。その際、異議者の家族などに出した手紙は全てドイツ語に翻訳された。異議者に対する有罪判決が確定した後、翻訳費用として11.494,20マルクを異議者に請求された。
異議者は、この扱いが彼のようにドイツ語を話さない外国人に対する差別である、と主張して、本件憲法異議の訴えを提起した。連邦憲法裁判所はこの主張を認め、手紙の翻訳については、①個別的に必要であるか否かの判断、②容疑者に、翻訳費用について警告すること、を要求した。その条件が充たされている場合、本件差別を刑事司法の機能のために正当化できるが、本件では個別判断も警告もなかったため、異議者に翻訳費用を請求することができない。

II.刑法第240条:BVerfG、NJW 1995, 1141(1995)座り込みデモ

事実関係:被告人は核ミサイル基地の前に座り込みデモ、そのため、軍のトラックが通れない。
「暴力」:物理的な力行使が必要か、心理的な強制で充分か。
以前の刑事判例(例えばBGHSt 23, 46):心理的強制で充分。座り込みも暴力。
罪刑法定主義、類推の禁止、構成要件の明白さ。
ドイツ連邦憲法裁判所判例86年11月11日、NJW 1987,43。
刑法第240条は違憲でない。
刑法判例の解釈が違憲か:4対4の同票で決定できない。
今回の結論:刑法判例の解釈が違憲。理由:
物理的な力行使:単にある所にいるだけでは足りない、被害者への影響が心理的のみ、必要な明白さがない、座り込みの目的によって起訴・不起訴が異なってくる虞れ、座り込みを罰するべき態度と考える場合、立法が必要。
その後の連邦通常裁判所の反応:95年7月20日の判決、NJW 1995, 2643。
事実関係:高速道路で座り込みデモ。
結論:強要罪が成立。
理由:最初に止まった車が後の車の物理的な障害物、心理的強制のみではない。
さらに、連邦通常裁判所第1刑事法廷2002年4月23日判決、www.hammpartner.de/1S100-02.HTM。
単に腕を開いて車の前に立つだけでは、「暴力」が成立しないが、その後、被告人は車のボンネットに体を乗せて物理的な力を行使して進行を妨害したため、「暴力」が成立した。

III.罪刑法定主義: 壁の狙撃者

連邦憲法裁判所第2法廷判決、96年11月12日、憲法異議を棄却。
Lenz 「壁の狙撃者と罪刑法定主義」青山法学論集39巻2号39頁参照。
EuGRZ 1996, 538またはNJW 1997, 929。
旧東ドイツでは、西への逃亡が犯罪、国境に壁、地雷、機関銃を持つ兵士。
壁で射殺された被害者について統一後起訴。
憲法第103条第2項、罪刑法定主義が問題。
旧東ドイツでは、狙撃者の行為が起訴されることが絶対にない。逆に起訴する行為が政治犯罪。
旧東ドイツ法を適用する場合でも違法な行為では問題がない。
「自然法」などを理由に、正当化事由を認めない場合、必然的に第103条第2項問題。
刑事裁判では103条違反がないと判断、有罪判決。
連邦憲法裁判所もこの判断を維持、憲法異議を棄却。
批判:罪刑法定主義の意義、旧東ドイツへの差別、座り込みデモ事例と壁の狙撃者事例の比較 、欧州人権条約第7条第1項との関係「何人も、実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった行為又は不作為を理由して有罪とされることはない。」「この条は、文明国が認める法の一般原則により実行の時に犯罪とされていた行為又は不作為を理由として裁判しかつ処罰することを妨げるものではない」。

IV.刑法第211条:同情殺害、BGHSt37,377

「(1)謀殺者は、無期自由刑に処する。
(2)謀殺者とは殺人嗜好から、性欲の満足のために、物欲から、若しくはその他の下劣な動機から、背信的に、若しくは残酷に、若しくは公共に危険を生ずべき方法を用いて、又は、他の犯罪行為を可能にし、若しくは隠蔽するために、人を殺した者である。」
被告人が看護婦。危篤患者5名を注射で殺害。動機は患者の苦しみに同情。
第一審判決:故殺。検察側の上告:謀殺と主張。
「背信的」:被害者が攻撃を予想しないこと、それによって無防備であることを利用。
更に、被害者に対する「敵対的動機」が必要。
被害者のために行動する場合、「敵対的動機」がない。
危篤患者の場合には、場合によっては「敵対的動機」がないが、 客観的に見て被告人の判断に妥当性があることが必要。
本件殺害行為の被害者の苦しみなどを配慮すると、同情する妥当性を容認。
検察側上告が棄却。
故殺について:「安楽死」による違法性阻却がない。
患者の同意がない、ドイツ法では不作為(治療中止)のみが認められる。

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2003年11月05日

ドイツ法講義 第19回

I. 最近の動き

閉店法に関する憲法異議
1999年、異議者のKaufhof株式会社に対し、差し止め判決(土曜日16時以降に開店したため)。
ガソリンスタンド、空港・駅での店との不平等、憲法第3条を理由に、憲法異議の訴え。11月4日には、第1法廷で公判を開く。判決は数週間後。

II.民法第123条:BAG NJW 1993,1154

「詐欺または違法な脅迫によって意思表示をさせられた者は、意思表示を取り消すことができる。」
女性のXが面接の際、自分が現在妊娠していない、と嘘 。
就職できた後に、使用者Yが労働契約を取り消し 。
質問が許されるか。判例変更:許されない。費用・差別・民法第611a条 、指令76/207。
女性応募者のみの場合でも 。

III. 民法第123条:BGH WM 1988,1156 横領と保証契約

Aが会社の金に手を出し、100万マルク横領。
被害者XがAの妻Y1、母Y2、義理の母Y3に保証を要求。
三人が刑事事件を回避するために保証契約に承諾、多額負債。
違法な脅迫:単に相手の苦境を利用することが足りない(138条と異なって)。
脅迫を明白に表現するか、暗示するか。
今回:被害者が刑事通告について発言なし、逆に「損害賠償だけ欲しい」と発言 。
結論:控訴審の判決を破棄、脅迫がないと判断。

IV.刑法第263条:OLG Düsseldorf NJW 1990, 2397 (雑誌講読)

刑法第263条:
「詐欺
自己又は第三者に不法な財産上の利益を得させる目的で、虚偽の事実を仮構して真実らしく見せかけることによって、又は真実の事実を歪曲し若しくは隠蔽することにより、錯誤を起こさせ、またはこれを持続させることによって、他人の財産に損害を加えた者は、五年以下の自由刑又は罰金に処する。」
事実関係:被告人が雑誌講読を訪問販売、その際「販売手数料はお年寄り介護の社団に寄付」と嘘。
詐欺罪:欺罔・錯誤・財産処分・損害・利得の意図。
損害:給付と反対給付が客観的にみて同等の価値。
財産:経済的財産概念・法的財産概念。判例・学説は経済的財産概念。
例:良俗・法律に反する契約の場合。
本件:被害者の目的が達成できない。その場合:目的が行為者からみて明らか、欺罔行為が目的について、その場合には損害。

V. 刑法第263条:LG Mannheim,NJW 1993,1488(悪霊払い)

事実関係:被告人Yは被害者Xにカードや手相から占い、50マルクの報酬。
Xが素朴で、被告人がそれを利用と計画。
Xに卵を提供させ、割れたところで卵のなかに黒い点が判明。
「悪霊だ、悪霊払いのために5000マルクを用意しなさい」と騙し、金銭を取り上げる。
詐欺罪:欺罔・錯誤・財産処分・損害・利得の意図。
損害:弁護側の主張が契約の自由。
しかし、「悪霊払い」は客観的不可能な給付のため、契約が無効。
従って5000マルクの請求権が生じない。
経済的損害概念で検討した場合でも、Xの利益がないため、損害。
50マルクの占い代は、将来を占いより娯楽が目的、反対給付、損害でない。
 
VI. 刑法第240条:BGHSt31,195(1986)、不作為と脅迫

「強要
(1)暴力により、又は耐え難い害悪の脅迫により、違法に他人に対して行動、受忍または不作為を強要した者は、三年以下の自由刑又は罰金に処し、特に重い事態においては六月以上五年以下の自由刑に処する。
(2)求める目的のため暴力の使用、又は害悪の脅迫が非難すべきものと認められるときは、この行為は違法である。
(3)本条の未遂犯は、これを罰する。」
事実関係:16歳の女性A(被害者)が万引き。百貨店警備員のBが彼女を逮捕。同僚のCが告発手続きに参加。その際、Aに性的行為を要求。
強要罪:手段(暴力・脅迫)、要求、違法性。
脅迫:Cが要求拒否の場合に自分で告発するとの脅迫が確認されていない。
「Bの告発を止めない」が脅迫における「耐え難い害悪」か。
不作為を脅迫材料として認めるか。
作為義務がない、逆に労働契約による告発を止める行為が違法。
不作為も「害悪」として脅迫手段になりうる。理由:作為との区別が困難の場合、違法性の段階の調整が可能。
要求:性的行為を要求したから、肯定。
違法性:手段が違法でない、要求が違法な行為でない、しかし手段と要求の関係が非難すべき。理由:労働契約違反、性的自己決定権侵害。

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2003年10月22日

ドイツ法講義 第18回

I. 最近の動き

労働者の保証
連邦通常裁判所の第11法廷(銀行法担当)の2003年10月14日判決はある保証契約を良俗違反(民法第138条)のために無効とした。
本件契約の保証人は、債務者の労働者であった(月収手取り2222.7マルク)。債務者の経営が危機的な状態になったため、新たに20万マルクの融資を銀行に要請したが、銀行が担保を要求した。
そこで、被告は職場を失うことを憂慮し、保証人を引き受けた。数ヶ月後、債務者は破産した。原告(銀行)は、保証契約に基づいて支払いを請求している。第1審は訴えを棄却、第2審は訴えを認容、第3審では再逆転した。
良俗違反の理由として、第11法廷は以下の事情を強調した。①融資当時では、既に危機的な状態であった。②被告の支払い能力を遥かに超える金額で、一生、弁済できない。③被告は、職場を配慮して止むを得ず保証を引き受けた。④被告の保証義務に対する何らの反対給付がなかった。

II. 民法第138条:保証契約と良俗違反

「(1)善良な風俗に違反する法律行為は無効である。
(2)とりわけ無効である法律行為は、他人の苦境・経験不足・判断能力の欠如・著しい意志の弱さを利用して、自己に又は第三者にある給付の換わりに財産的利益を約束または提供させ、当該利益と給付の不均衡が目立つ場合、その場合の法律行為である。」
連邦通常裁判所1997年9月18日、BGHZ 136, 347。
銀行Xが経営者Aに融資。92年5月、およそ90万マルクの負債。営業所の土地に50万マルクの土地債務、動産の担保譲渡、生命保険からの請求権・顧客に対する請求権の担保譲渡。しかし、担保からして融資限度額を超えていたため、さらに、顧客の破産によりAが相当程度の被害を覚悟する必要があったため、銀行が新たな担保を要求。当時Aの婚約者であったY(現在Aの配偶者)がそのため保証契約に同意。92年10月、銀行が解約、A破産。XのYに対する請求が本件。
良俗違反(民法第138条)により、保証契約が無効?
現在の判例の基準:①家族の保証契約②保証人には、保証された債務に相当する財産がない③主たる債務者が財産を保証人に譲渡して債権者に損害を与える行動に対する対策としても、保証契約に債権者の正当な利益がみとめられない
を条件に、良俗違反を肯定。
本件:①婚約者でも配偶者でも家族。
②保証人の差し押さえ可能収入からして、保証金額の返済が無理。5年分がおよそ10万マルク、90万マルクの11%程度しかない。
③既に75万マルクについて充分な担保があったため、財産譲渡対策として必要な保証金額は15万マルクのみ。90万マルク全額を対象とする本件契約は、担保の取りすぎである。
YがXと比べて、弱い立場であり、保証契約について自分の利益がなく、単に、取引経験・法律知識がないために契約を締結する用意を、銀行が良俗に違反した形で悪用した、と評価。
良俗違反のため、保証契約が無効、Xの訴えを棄却。

III.民法第138条、第253条第2項(旧第847条) BGH NJW 1991, 1046 強姦示談

「身体・健康・自由および性的自己決定権に対する侵害のため損害賠償義務が成立する場合、被害者は非財産的損害についても適切な金銭的賠償を請求できる。」
2002年8月1日から旧第847条が第253条第2項に。損害賠償法改正法により、慰謝料についての改正:危険責任領域でも認める。改正法のその他の内容:子供の交通事故責任(過失相殺を含めて):10歳から、交通事故の危険責任の限度額を増額(現在75万マルクから600万Euroに、危険物運搬の場合には怪我・死亡について600万Euro、物についての損害別状600万Euro)、修理などを実際しない場合、付加価値税の分を請求できない。
本件被告が原告の親に7万マルク以上を融資。原告が14歳となってから数回に旅行に連れて、ホテルで一緒に宿泊。87年5月22日:弁護士による書面で警察に強姦罪など通告、8月6日示談成立。借金返済を放棄、その上に8万マルクの慰謝料を分割払い、原告側が通告を取り下げる義務、事件について沈黙する義務を負う、との内容。通告を取り下げた後、検察は事件を無起訴処分で処理。沈黙義務違反を理由に、1万マルクを支払った後に、それ以上の支払いを被告が拒否。
原告は示談に基づき残りの7万マルクを要求。
強姦が事実か、嘘かについては当事者の間に争い、上告審までは証拠調べなし。
138条、良俗違反:通告取り下げ義務が原則可能、賠償責任を追及する手段の場合。
賠償請求権を大幅に上回る利益を目的とする場合には良俗違反。
「懲罰的損害賠償」(punitive damages)がドイツの公の秩序に反する判例と同様、損害賠償によって儲かるべきではない、との判断が理由。
親の借金返済を放棄した利益については損害賠償請求権がない、原告については通常判例で認める金額(6千マルクから3万マルクまで、強姦殺人未遂の場合)と比較すると、8万マルクの慰謝料が高い。
示談に基づく請求権がないが、不法行為による慰謝料請求が可能、但し、証拠調べが必要。

IV.民法第134条:BGHZ 116, 268(91年)、病院の販売と患者データ

「法律上の禁止に違反する法律行為は無効である。但し、当該法律からみて有効であると分かる場合、その限りではない。」
医者Aが引退、病院を医者Bに販売、その際、患者データもBに譲る義務。
代金支払いを請求する訴訟で、この義務の不履行に基づいてBが抗弁。
民法134条:刑法第203条違反が問題、医者が患者データについて秘密義務を負う。
BGH NJW 1974、602: 秘密義務違反がない、患者の同意が推定される。
今回判例変更、患者の個別同意がない限り秘密義務違反。
データ保護の重要性が73年より認められるように。
当事者が以前の判例に信頼、故意違反がないが、客観的な違反でも134条が成立。

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ドイツ法講義 第17回

I. 最近の動き

首相の髪の毛
連邦憲法裁判所第1法廷第1部会8月26日決定(9月26日公開)。
原告がGerhard Schröder首相。被告は通信社として首相に関する記事で、インタビューされている人の次のような発言を公開した:
「彼の完全に黒い髪の毛は不信な感じをする。髪の毛を染めることを止めた方が説得力に貢献するだろう」、との発言である。
原告は、髪の毛を染めていない、と主張した上に、被告に対し、本件発言の再度の掲載を止めるように、停止の訴えを提起した。
一般人格権侵害が成立、とHamburg高等裁判所が判断した。連邦憲法裁判所は、第5条侵害を理由としたこの判決に対する憲法意義を却下した。真実でない事実主張については、第5条で保護する必要がない。また、被告は、本件で必要な注意義務に違反した。特に急ぐことがない本件記事を公開する前に、原告に確かめるべきであった、と連邦憲法裁判所が述べた。

II. 民法第249条:BGHZ75,230(79年)、万引き

被告が12マルクの物を万引き。原告が損害賠償を請求。
万引きを処理する従業員の人件費:民事訴訟法第91条、認めない。
万引きを逮捕する場合の特別手当:50マルクまでは損害。
理由:所有権を保護する措置だが、加害者の個別行為から生じる費用。

III. 民法第812条:BGH ZIP1994,1098、偽造振り込み

「他人の給付により、または他人の負担となるその他の方法で、法律上の原因なくあるものを利得した者は、その他人に対して返還義務を負う。」
銀行Dの従業員と共同偽造による18万マルクの振り込み、Xの口座からYの口座へ。
給付の返還:給付がない。
非給付の返還:「利得」+「法律上の原因なく 」+
「他人の負担となる」?偽造についての危険は銀行に。
原告の口座が法的には負担なし、銀行に訂正を要求できる。
従って、「他人の負担」とは銀行の負担、原告の請求が成立しない。

IV.民法第812条:BGHZ 116, 251 (91年)、無効契約

XとYが土地について売買契約。公証人契約では金額の一部を隠す。
土地についての契約:公証人が必要、無効の原因。
両方の当事者が給付の返還を請求、無因主義。
その際、銀行費用など:請求できない。理由:代金についての利息を請求できる。

V. 民法第138条:BGHZ 123, 368(93年)、障害者の相続と生活保護

Y1とY2は兄弟、Y1は精神障害者。親の遺言ではY2が72パーセント、Y1が財産の28パーセント。Y1が先位相続人、Y1の死亡後は財産がY2に(後位相続人)。Y2は遺言執行者。
Y1に生活保護を提供する市Xが財産を強制執行の対象にすることができない。
遺言が良俗違反として無効と主張。
良俗違反が否定。理由:Y1には子供がいない、極端に不利とは言えない、私的自治、障害者の家族の負担、生活保護より良い生活できることが親の狙い、親の責任を果たす 、公予算の負担軽減より子供の将来を重視することは当然 。

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ドイツ法講義 第16回

I. 最近の動き

接続業者の責任
連邦通常裁判所第6法廷、9月23日判決
原告に対する侮辱・殺害教唆など、違法な情報について、当該ページのために場所を提供した接続業者に対し、民法823条に基づいて損害賠償を請求。
接続業者の責任については、1997年の立法(2001年12月改正後通信サービス法(Teledienstgesetz)第11条:他人の情報を保存している場合、責任は、接続業者が当該情報に関する知識を必要とする。被害者は接続業者に苦情を伝える際、どのページにどの違法情報があるかを簡単に確認できる形で説明しなければならない。本件では、この説明を立証できなかったため、訴えを棄却した。

II. 民法第242条、権利の濫用、BGHZ 137, 205 (1997年)

「債務者は、給付を信義誠実と一般慣習に従って履行する義務を負う。」
原告が被告と中古車の売買について交渉した。被告が一定の値段で購入するように申込んだ。原告には、申込みに対して承諾の意思表示をするために、10日間の期限が認められた。
原告は、期限内に書留で承諾の意思表示を被告に送ったが、被告が不在のため、郵便配達人が不在票だけを残した。この不在票を提出して郵便局で書留を受けるべきところ、被告は放置した。そのため、書留が原告に戻った。当然、その時点では10日間の期限が過ぎていた。原告がその時点から2ヶ月後、被告に中古車を決められた値段で引き受けるように要求し、その後、本件訴訟で対価の支払いを請求した。
通常は、意思表示が期限内に到達していないため、売買契約が成立していない。しかし、不在票を放置したことが被告の責任であるため、そのことを民法242条に基づいて主張できない(権利濫用の抗弁)、と原告が主張した。
本件では、権利濫用にはならない。被告は積極的に到達を妨害したことがない。また、不在票には原告の名前が記入されていなかったため、書留の内容を推測することはできなかった。また、本件では、原告も郵便局から書留が戻った時点から2ヶ月ほど放置したため、一方的に被告の責任であるとは言えない。訴えを棄却。

III. 民法第249条: BGHZ 118,312(92年)、刑罰的損害賠償(punitive damages)

「損害賠償義務を負う者は、賠償義務が生じた事情が発生しなかった場合の状態を作らなければならない。人のけが・物の損傷のため損害賠償しなければならない時は、債権者は原状回復にかわって、原状回復のために必要な金額を請求できる。」
原告が被告に対しアメリカで確定判決を獲得した後に、ドイツで強制執行名義として認容を申請。アメリカの判決の内容は:不法行為(未成年者の性的乱用)を原因に、損害賠償と別状、40万ドルの刑罰的損害賠償を認めた。
そもそも民事判決か、刑事判決か:個人に対する支払い請求の場合に民事。
民事訴訟法:公の秩序に反する判決を認容しない。
ドイツ不法行為法:賠償だけ、威嚇などは刑法。
個人の刑罰的損害賠償は認めない。理由:他の債権者との平等、高額 。
検討:賛成。但し、マスコミによる一般人格権侵害の場合に高額な慰謝料を認める最近の判例の傾向は、本判決と矛盾している。被害者の高額金銭請求を認めるため、むしろ不当利得が請求原因となりうる。
なお、1999年5月21日の立法(BGBl 1999 I, 1026)により、本判決の考えがドイツ国際私法の条文で認められるようになった。ドイツでは、被害者の適切な賠償を大幅に超える場合、または、被害者の適切な賠償と異なる目的のためであることが明らかである場合、外国の損害賠償判決を認めることができない、と定めた。

IV.民法第249条:中絶義務

問題の所在
生命を侵害する義務:犯罪防止のため、戦争など。
妊娠中絶の民法問題:妊婦と医者の契約。通常の場合:報酬支払のみが問題、妊婦が中絶を行うように訴えを起こすことが利益関係から考えてない。
刑法で禁止された場合、民法134条によって契約も無効。刑法では現在「相談制度」。憲法第2条が要求する生命保護が以前の制度より効果的か否か、これからの検討が必要。
「相談制度」導入が一部違憲とした連邦憲法裁判所の93年判決(ジュリスト1034参照)は契約が有効とした。
疑問:「中絶義務」と憲法第2条における「保護義務」。

中絶失敗、BGHZ 95, 199(1985年)
扶養費用を損害賠償として医者に請求。
連邦通常裁判所:損害は子供の存在ではなく、存在によって生じる扶養義務。請求認容。
第三者が子供の生命権を主張できない。「中絶義務」を認めることは「保護義務」から疑問。

羊水検査、BGHZ 89, 95 (1983年)
39歳の「高齢出産」でも羊水検査ないため、子供の障害が判明しない。そのため、中絶できない、扶養義務による損害を医者に請求。
検討:原状回復の原則、当該子供の利益、私法の課題と社会法の課題、子供の生命権を国家が直接侵害、医者が主張できない、中絶促進義務が生命保護に悪影響、個別事例における経済的援助より一般的生命保護

連邦憲法裁判所第1法廷1997年11月15日判決、NJW 1998,519
被告が泌尿器科専門医、Xに断種手術を実施したが、失敗のためXの配偶者が妊娠、子供が生まれた。
配偶者の訴えに基づいて子供の生活費と慰謝料を認める判決、医者の憲法異議。
憲法異議を6対2で棄却。第2法廷の1993年の判決(BVerfG NJW 1993, 1751 = ジュリスト1034,68)では確かに疑問が、本件は直接妊娠中絶事例ではないため、大法廷を開く必要がない(5対3)。
生命の保障と訴訟法:医者は生命保護の必要性を主張できない。

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ドイツ法講義 第15回

I. 最近の動き

ドイツ統一記念日(10月3日)
1990年、統一条約が発効。原則として旧西ドイツ法秩序、EU法を全領域に適用。例外として経過規定、例えば妊娠中絶、環境保護水準など。壁の狙撃者問題。

先生のスカーフと民主主義

連邦憲法裁判所第2法廷、2003年9月24日判決。
原告はイスラム教徒の女性。宗教上の理由では、頭にスカーフをかけなければならない。学校の先生として就職を希望したところ、このことが学校内宗教活動と見られ、就職できない、との拒否処分。その処分に対する行政裁判所での訴えを提起し、連邦行政裁判所で敗訴。連邦行政裁判所の判決に対し、宗教の自由および平等の人権を理由に、本件憲法異議を提起。
憲法異議には理由がある。民主主義では、本件のような重要な問題については、立法者の判断(この場合には州法)が必要。単なる文部省の判断では、就職の可能性を拒否できない。

II. サッカーでの怪我:BGHZ63, 140(74年)

民法第823条第1項「故意または過失によって他人の生命、身体、健康、自由、所有権 その他の権利を違法に侵害した者は、それによって生ずる損害をその他人に賠償する義務を負う。」
Aはサッカー試合でBに怪我を負わせ、ルール違反か否かについて不明。
問題点:「違法に」?
違法性阻却事由:社会的妥当性・同意 。
立証責任についての討論:重傷・両方が同じリスク・確認が困難の場合が多い・自分の以前の態度に反する行為をすること(venire contra factum proprium)。
「通常事例方法」で検討:通常は、自分が有利となる事実に関して立証責任。ルール違反があった事実は、被害者に有利のため、Bの立証責任が原則。製造物責任の場合、この原則からの例外を認めるが、本件では例外を認める理由があるか。

III. 犯罪報道:BVerfGE35,202 (73年)(Lebach)

謀殺幇助、受刑後仮釈放の予定。ZDF(国営テレビ)がある番組を計画。この番組の放送停止を請求する訴えが本件。
請求原因:民法第823条「一般人格権」
損害賠償請求と停止請求。
論拠:放送の自由・テレビの影響力・視聴者の利益・犯人の責任・時間的制限・社会復帰・被報道者の性的傾向についての報道。

IV.営業所についての権利:BGHZ 62, 29 (73年)

Yが実用新案に基づき、Xに対し生産停止、損害倍所を請求。
しかし、当該実用新案は新規性がなかったため、無効。
XがYの要求に従った間に営業妨害により損害が生じたが「営業所に関する権利」侵害に基づいてYに賠償を請求。
問題は「故意または過失」。本件では、Yの弁護士は、当該実用新案が有効、と判断。その判断が明白に間違っているとは言えない。そのため、過失を本件では否定。
しかし、著作権、特許など知的財産権を主張する場合、常に損害賠償責任の可能性がある。

V.営業所についての権利:BGHZ65,325(75年)

被告の財団「Warentest」がスキーの閉め具をテスト、結果を公表。
テスト方法に諮問委員会の助言(製造者・販売業者・消費者・後の原告も)。
技術監査協会(TÜV)にテスト実施を依頼。
被告が結果を評価、原告の品物に低い点数。
停止・損害賠償の訴え。
侵害行為:「設立・稼働中の営業についての権利」。
違法性:営業に対する侵害の場合、積極的確認が必要。
客観的・中立・専門知識を備えて・憲法第5条・消費者保護。

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2003年10月21日

労働者の保証契約

連邦通常裁判所の第11法廷(銀行法担当)の2003年10月14日判決はある保証契約を良俗違反(民法第138条)のために無効とした。

本件契約の保証人は、債務者の労働者であった(月収手取り2222.7マルク)。債務者の経営が危機的な状態になったため、新たに20万マルクの融資を銀行に要請したが、銀行が担保を要求した。

そこで、被告は職場を失うことを憂慮し、保証人を引き受けた。数ヶ月後、債務者は破産した。原告(銀行)は、保証契約に基づいて支払いを請求している。第1審は訴えを棄却、第2審は訴えを認容、第3審では再逆転した。

良俗違反の理由として、第11法廷は以下の事情を強調した。①融資当時では、既に危機的な状態であった。②被告の支払い能力を遥かに超える金額で、一生、弁済できない。③被告は、職場を配慮して止むを得ず保証を引き受けた。④被告の保証義務に対する何らの反対給付がなかった。

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2003年10月13日

首相の髪の毛

連邦憲法裁判所第1法廷第1部会8月26日決定(9月26日公開)。

原告がGerhard Schröder首相。被告は通信社として首相に関する記事で、インタビューされている人の次のような発言を公開した:

「彼の完全に黒い髪の毛は不信な感じする。髪の毛を染めることを止めた方が説得力に貢献するだろう」、との発言である。

原告は、髪の毛を染めていない、と主張した上に、被告に対し、本件発言の再度の掲載を止めるように、停止の訴えを提起した。

一般人格権侵害が成立、とHamburg高等裁判所が判断した。連邦憲法裁判所は、第5条侵害を理由としたこの判決に対する憲法意義を却下した。真実でない事実主張については、第5条で保護する必要がない。また、被告は、本件で必要な注意義務に違反した。特に急ぐことがない本件記事を公開する前に、原告に確かめるべきであった、と連邦憲法裁判所が述べた。

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2003年10月06日

ドイツ法講義 第14回

I. 最近の動き

著作権法改正が官報に掲載
BGBl I 1774、9月12日。
k.lenz.name/LB/archives/000597.htmlも参照。
第9回、第2回参照。立法の流れ:2001年EU指令、連邦議会での承認、連邦参議院での変更要請、変更後、再度に連邦議会が承認。
主な内容:DRM規制、著作権の制限に関する規制。指令実施に必要な点に限って改正して、その他の論点は今から開始される次回改正作業に先送り。

II.ドイツ法第4周:問題事例・判例」の意味

通常事例で一番重要な条文を説明。「通常事例方法」と従来の解釈方法:文言解釈の一種。
判例・問題事例の選択基準 :最近の問題 、議論の対象 、刺激的。
「判例」と「連邦憲法裁判所先生の意見」。
判例と「正解」、無謬性論、講義「ドイツ法」の試験への応用。

III.ビデオに見えるドイツ法(問題事例「喫煙の自由」)

IV.不法行為の問題事例:製造者責任

民法第823条第1項「故意または過失によって他人の生命、身体、健康、自由、所有権 その他の権利を違法に侵害した者は、それによって生ずる損害をその他人に賠償する義務を負う。」
原則:故意・過失が必要。
90年1月1日からEUの指令を実施する製造物責任法。
危険責任、第1条。
民法の場合:2002年7月までは慰謝料の扱いが異なっていた、今は同じ(第253条第2項)。しかし、最低金額500ユーロ(製造物責任法第11条)・ 製造物以外のもの、消費者として利用しているものとの限定がない。
第4条:製造者の定義。部品の製造者、輸入者も。
第10条:同一事故の最高額8500万ユーロ。
判例による製造者責任:
BGHZ 51, 91(68年)鶏ペスト
ワクチンを注射したところで病気発生、損害が発生。
メーカの責任:過失についての立証責任が製造者側。
BGHZ 99,167(86年)(Honda)
Honda制バイクで事故、原告の息子が死亡。
原因:別なメーカが販売した付属品、バイクとの相性が悪く高速では事故。
Honda社に対する製造者責任の訴え。
問題点:「侵害した者」。
不作為、作為義務、製造物を監視する義務。
論拠:保証条件・他社製造物・生命に対する危険・多くに使われた付属品・消費者からの被害報告を無視。

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2003年07月10日

ドイツ法講義 第13回

I. 最近の動き

不正広告

連邦通常裁判所第1法定(不正競争法担当)7月3日判決
有料電話情報提供サービスの広告は、値段を表示しなければならない(値段表示法)。
値段表示省令第1条:サービスを提供する場合、値段を表示しなければならない。単なる広告なら、その限りではない。
bundesrecht.juris.de/bundesrecht/pangv/
電話情報提供の場合、客が広告を見て即時サービスを利用できるため、単なる広告ではなく、既にサービス提供である。
通信法により、通信サービスに関する料金を公開する義務は別状あるが、値段表示法がより厳しい義務を制定することができる。
そのため、消費者保護団体の通信業者に対する差し止めの訴えが成功。

株式会社管理に関する方針(Corporate Governance Code)

7月4日に公開。財界指導者、学者の委員会が制定。株式法第161条により、上場している株の場合、会社が遵守するか、それとも、遵守していない方針の部分について、公開しなければならない。
英語版はwww.corporate-governance-code.de/eng/kodex/1.html

連邦議会がEU拡大条約を承認

EU(欧州連合)の加盟国が現在15カ国。新たに10カ国の加盟のため、拡大条約を承認する国内手続きのため、連邦議会の承認、連邦参議院の承認が必要。575名承認、1名拒否、4名棄権。

法曹教育改正法が発効(7月1日)

2002年7月11日法律、官報I2592。主な内容:
司法修習生のとき、弁護士での研修を12ヶ月に延長。裁判官は原則、2年以上の弁護士経験、またはその他の社会人経験を必要。第1次司法試験の成績の5割は、各大学での試験によって評価。外国語による科目、または外国語科目が必須。交渉能力を教育目標に。

II.ドイツにおけるOpen Sourceソフトの法律問題

「Open Source」(利用自由ソフト)とは何か。ドイツでの地位、将来性。

問題点1:特許法との関係。
EU段階には立法の動き。以前の生物学分野特許指令と同様、今度は、コンピュータソフトの特許性を原則として認める方向に。
認めた場合、利用自由ソフトが不利となる。特許料を支払う予算の確保が困難、特許侵害の指摘がしやすいなど。

問題点2:GPLの責任限定約款の有効性。
ドイツ民法第307条:信義誠実に反する形で相手当事者に不利な約款。
Creative Commons保障問題に関する原稿も参照:
k.lenz.name/j/r/CC.pdf
約款の締結:英語だけの問題。
本件の場合:実施料の支払いはない、無償契約。そのため、ある程度の制限は当然。
但し、故意・重過失の場合でも責任を排除することは行き過ぎ。そのため、約款が全面的に無効となる場合、代わりに民法521条(贈与における贈与者の責任)が妥当すると思われる。
なお、Spindlerの最近の本が参考になる:
internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0707/gpl.htm


問題点3:消耗原理との関係。
消耗原理とは(ドイツ著作権法第17条)。著作物を最初に売った時点で既に必要な利益を得たため、著作権者は、その後、著作権に基づいてその著作物の第三者への譲渡を阻止できない。
そのため、利用自由ソフトを市場に出した時点で、著作権による更なる譲渡の制限ができない、との指摘。
しかし、GPLの法的効果が消耗原理と同様。また、消耗原理により、著作権が消滅するわけではない。例えば、当該著作物の複製は依然としてできない。

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2003年07月03日

ドイツ法講義 第12回

I. 最近の動き

生物学分野特許に関する立法(第7回も参照)
6月25日:閣僚が法案を承認、www.bmj.bund.de/images/11618.pdf
1998年にEU段階で指令1998/44が成立した。第3条第2項:技術過程により生産された物質は、自然で存在する場合でも、特許対象になる。第4条第1項:植物・動物の種類は、また植物・動物を生産する生物学過程は、特許対象とならない。第5条第1項:人体、その一部(DNAを含む)は特許の対象でない。第2項、第3項:技術過程により人体の一部を生産する場合には、特許対象になる。遺伝子の場合、産業上の利用法を願書に記述しなければならない。第6条:人間クローンその他、良俗違反の発明は特許対象にならない。
ドイツ国内立法の期限が2000年7月30日に過ぎた。委員会からの訴えを憂慮する必要があるので、立法が必要。
今回の法案:指令の内容と同様。更に、良俗違反として特許禁止:人間クローン方法、人間の遺伝子組み換え方法、人間の胚子を工業・営利目的のために使用する場合、動物の遺伝子を組み換えにより当該動物・人間の医療上の利益なく当該動物に苦痛が生じる方法。

Zypries法務大臣の公演

6月27日、国際刑事裁判所条約5周年をきっかけとする学会。
ドイツが積極的に応援。予算負担で一番。また、2002年夏の立法により、幅広く条約で犯罪となった行為について、国内法でも犯罪化し、「世界法主義」で幅広く適用を可能とする。行為者がドイツに滞在することだけで充分。
2002年6月26日法律、官報 I 2254。
www.iuscrim.mpg.de/forsch/online_pub.html#legaltextでは、各言語への翻訳(アラブ語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語。
国際刑法:第1条。重犯の場合、外国の犯罪にも適用。
第4条:重犯の場合、時効がない。
第6条:民族殺戮。
国籍・人種・信仰・民族が同様である集団を部分的又は全面的に絶滅させる意図で、
①集団の構成員を殺す②集団の構成員に重大な心理的・身体的損害を加える③集団を、その身体的破壊に導く生活環境に置くこと④集団内での出産を防止する措置を採ること⑤集団の子供を暴力で別な集団に移転すること
は原則、無期自由刑。2-5の場合で比較的責任が軽い場合には、5年以上の自由刑。
第7条:人道に対する犯罪。
民間人口に対する幅広い、又は組織的な攻撃において
①人を殺す②ある人口を部分的または完全に破壊する意図で、その破壊に導く生活環境に置くこと
は無期自由刑。
③人身売買を行う④人を国際法に違反して追放する⑤人を拷問する⑥人を強姦する、売春を強要する、生殖機能を奪う、人口の民族的構成に影響を及ぼす意図で強制的に妊娠させた女性を監禁する⑦人を強制的に蒸発させる
は5年以上の自由刑。
第8条から第12条まで:戦争犯罪。例えば:国際法で保護されている人(捕虜、民間人、既に武器を捨てた戦闘員)を殺す(第8条第1号)は無期自由刑。民間人口を攻撃の的にする(第11条第1号)は3年以上の自由刑。毒、生物兵器の使用(第12条)は3年以上の自由刑。
背景:国際刑事裁判所が2002年7月1日から組織。ドイツ人については、ドイツで本立法に基づいて対応することになるため、国際刑事裁判所の管轄が生じない。また、他のEU加盟国と同様、国際法に対する犯罪には、ドイツが積極的に対抗する意思。

II.連邦憲法裁判所法第90条

「(1)各人は、国家権力が人権、又は第20条第4項、第33条、第38条、第101条、第103条、第104条が保障する権利を侵害した、と主張して連邦憲法裁判所に憲法異議の訴えを提起できる。
(2)当該侵害に対し法律上の救済がある場合、その救済方法を尽くして初めて憲法異議を提起できる。但し、憲法異議には一般的な意義が認められる場合、又は救済方法を尽くすことを要求することによって、異議者に重大な回避できない不利益が生じる場合には、連邦憲法裁判所は救済方法を尽くした以前でも憲法異議について決定することができる。」
人権:例えば法の前の平等、所有権、一般自由権、職業の自由、意見表明の自由。
生命の場合。
第20条第4項:抵抗権。
第33条: すべての州で同じ権利 、公務員職は能力のみの基準ですべてのドイツ人に開かれている。
第38条:連邦議会の選挙に関する保障。
第101条:特別裁判の禁止、法定裁判所の保障。
第103条:裁判における基本権、法律上の聴聞 、罪刑法定主義 、二重処罰の禁止。
第104条:逮捕に対する手続き保障(裁判官による逮捕状など)。
第2項の原則の理由。
罰則を含む法律に対する直接憲法異議が可能。

III.ビデオに見えるドイツ法の実務(交通事故)

Posted by Karl-Friedrich Lenz at 14:56 | Comments (0) | TrackBack